山登り

大学までがピクニック気分の山登りだとすると、
自分の意志以外にも周りの雰囲気や親の意向などの別の力によって、
半ば強制的に参加するレクレーション的なイベントである。
一方、大学院進学は登山である。
参加不参加は本人の完全な自由選択。
いわゆるチャレンジコースだ。
必要な知識、技術、装備、体力などを調え、「研究」という山に挑戦する。
遊歩道など整えられた山道はない。
険しい道なき道を歩んでいかなければならない。
時に休むことも必要だが、
一歩ずつ確実に登っていかないと頂上には辿り着けない。


本人の技術、知識などによって、
あるいは立場や環境によって同じ山でも難易度は違ってくる。
あるものにとっては容易く登れる山かもしれないし、
あるものにとっては困難を極める山かもしれない。
また、皆それぞれ大きな荷物をかかえている。
共通の必要装備(ゼミや掃除当番など)以外にも、
自分にとって大事なもの、
例えばクラブ活動や音楽、彼氏彼女、家庭。
あるいはどうしようもない束縛、
例えば生活費を稼ぐためのアルバイト、通学時間、言語。
あるいは目には見えないプレッシャー。
例えば研究成果、就職、論文。
などなど、皆それぞれいろいろな荷物をかかえている。
(決してお荷物で足手まといという意味ではない、念のため)


本人に能力があれば、あるいは難易度の低い山を登るのであれば、
多少の余分な荷物をかかえることなど屁でもない。
能力、難易度、荷物のバランスが崩れると、
歩みも遅くなり、休み休みいかなければならない。
取り返しのつかない重大な事故にもつながりかねない。
しかし、登りはじめた以上、登る山は途中で簡単に変更はできない。
ではどうするか?


まずは荷物を軽くしよう。
簡単に降ろせる荷物もあるだろう。
苦渋の決断が必要なものもあるだろう。
山を登るのにそれほど多くの荷物は必要ない。
つぎに技術・体力・知識を身に付けよう。
今まで荷物として重かったものも、
努力によって荷物と感じなくなるだろう。
最後に山登りをやめよう。
時としてこのような決断も必要かもしれない。
決しておすすめではないので、
できるだけそういう人たちを手助けしたいと思う。
荷物の持ち方を教えたり、登り方を教えたり、
時には代わりに荷物を持ってやったり。
しかし、最終的には本人のやる気次第。