生命倫理コミュニケーション講義

生命科学研究科の授業にはそのような授業がある。
研究者としてのコミュニケーションについて学ぶ授業で、
自分の研究を小中学生向けに話したり、
実際に病院で遺伝子治療の方針説明会に参加したりする。
その授業の1コマで、
NHK環境科学部専任ディレクター村松秀氏のセミナーがあった。
授業自体はとってないが、参加自由ということだったので聞いてきた。
村松氏はNHKドキュメンタリーで論文捏造に関する番組を作成した人で、
『論文捏造』の著者でもある。


内容は著書の『論文捏造』に沿ったものだったが、
後半は報道の立場から見た研究者という話だった。
報道関係者と研究者という違いはあるが、
実験(取材)に基づく論文発表(報道)という点でよく似ていると思った。
そして、論文捏造も『あるある』の捏造も構造的によく似ている。
ポスドク問題があるようにフリーランスのカメラマンやディレクター問題もある。
どちらも焦りやプレッシャーから捏造する。


研究をとりまく環境の変化も指摘していた。
原理や真理を追究する研究から、技術につながる研究へ変わった。
そしてそこには、国家的戦略の資金が供給されプレッシャーも大きくなった。
しかし、研究者は何も変わらない。
その歪みが捏造を引き起こす。


最後に、真摯な態度で研究をしてほしい、と。
そして社会へ『伝える』ではなく『伝わる』コミュニケーションを、と。
ゼミや学会発表も聞き手を意識した発表が大事なわけで、
わかりやすく説明するためには、複雑なことをより単純化する必要がある。
どっかのキャリア・パスセミナーでも同じようなことを聞いた。
さすが、全国民を相手に報道しているだけのことはある。